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現代アートで
未来とつながる
新たな視点

UESHIMA MUSEUM
茶陶と現代陶芸展「時のうつほ」開催

このたび、UESHIMA MUSEUMでは、2026年9月2日(水)より、6F展示室にて、茶陶と現代陶芸展「時のうつほ」を開催いたします。

本展は、茶の湯の伝統と現代アートとの交わりに焦点を当てる新たな取り組みの第一弾として、陶芸家・建築家の奈良祐希氏がキュレーションを手がけます。茶陶と現代陶芸を通して、受け継がれてきた美意識と現代の表現との新たな関係性を探ります。

皆さまのご来館を心よりお待ちしております。

開催日

2026年9月2日(水)~

開催時間(日時指定WEBチケット制)

11:00–17:00(最終入場16:00)

開催場所

UESHIMA MUSEUM 6F展示室

キュレーター

陶芸家・建築家 奈良祐希

ご鑑賞条件

※6F展示室は、『時のうつほ(お抹茶体験)+鑑賞セット』チケットでのみご覧いただけます。
※茶室体験は時間指定制です。

入館料(税込)

(日本国内在住者)

時のうつほ(お抹茶体験)+鑑賞セット
一般 : ¥3,500
中高生 : ¥1,200
小学生 : ¥700

※茶室は未就学児のご利用はできません。
※小学生は美術館鑑賞無料です。茶室利用時のみ料金が発生します。
※茶室体験は、ご自身で抹茶を点てていただくセルフ形式です。
※茶道指導、点前の実演、スタッフによる茶室・作品解説は含まれておりません。

予約方法

事前予約制
ご予約はこちら

休館日

月曜(月曜が祝日の場合は開館、翌平日休館)

UESHIMA MUSEUM

UESHIMA MUSEUMは、UESHIMA MUSEUM COLLECTIONのオーナーである植島幹九郎の母校でもあり、「自調自考」を基本目標に国際的な視野や高い倫理観を重視した教育を行う事で高い評価を受けている、渋谷教育学園の敷地内に位置します。また、当美術館の建物は、1988年に設立され、翌年9月に当時の英国首相であった故マーガレット・サッチャー氏同席のもと開校式の行われたブリティッシュ・スクール・イン・東京が2023年8月まで利用していた建物をリノベーションの上、開館致しました。

住所

東京都渋谷区渋谷一丁目21番18号 渋谷教育学園 植島タワー

館長

植島幹九郎

本展に寄せて
UESHIMA MUSEUM 館長:植島幹九郎

私と茶の湯との出会いは、奈良氏の作品を収蔵したことに始まります。氏との対話に導かれて茶の湯の世界に心を開き、ご縁をいただいて裏千家に入門し、当館に茶室・幹槐庵を構えるに至りました。さらにご縁に恵まれて樂家十六代吉左衞門氏の茶碗と出会い、長次郎以来四百年余の伝統が、今この瞬間も生きて更新され続けていることを知りました。

その深く広い世界への入口を開いてくれた奈良氏は、大樋焼の系譜に生まれ、陶芸と建築を横断しながら、茶の湯の歴史と現代アートの双方の文脈に立つ稀有な作り手です。本展を氏に委ねたのは、私にとって必然でした。

器の外形ではなく、内に抱かれた「空」を見る——。伝統の茶碗から現代の造形まで、十七人の作家による十七の器が、その眼差しのもとに一堂に会します。器が抱く豊かな空気を、どうぞご自身の目で、そして全身で感じて頂けると幸いです。

陶芸家・建築家/本展キュレーター:奈良祐希

植島幹九郎さんから本展のキュレーションについてお声がけを頂いた。でも躊躇った。なぜなら一介の作家でありキュレーターではないからだ。

僕は茶陶や工芸について解説する立場にはない。
ただ一人の作家として、大樋焼の系譜に身を置き、茶陶の歴史に触れながら、同時に、現代アート、建築設計といった領域を行き来しながら創作活動に励んできた。植島さんと僕の出会いがこの美術館における現代アートと工芸をつなぐブリッジになったのだとすれば、僕はこの物語を構成する当事者かもしれない。そんな気持ちで有難くお引き受けをすることにした。

本展は、一見すると、異なる時代や文化、目的のためにつくられた作品が並べられている。しかし、その中心には、いずれも「うつわ」という共通の概念が存在する。「うつわ」という言葉は、もともと「うつほ」、すなわち「空」なるものから生まれたといわれている。「うつわ」を、その外側の形ではなく、内側にある「うつほ」として捉えてみる。自然素材によって囲われた内側の「うつほ」が、水や花、食物、光、人の手、想い、そして空気を受け入れることで、うつわは初めて魂を持つ。

目に見える全てのものは、いつかは変化し、失われていく。しかし、形によって創出された「うつほ」は、人の身体や記憶、痕跡と密接に結びつき、いつしか時空の旅に出る。「うつほ」であることによって変化を受け入れ、まだ存在していない何かを迎え入れることができる。そこには、完成した形以上に豊かな可能性がある。この展示を巡りながら、作品の外形や表面、輪郭だけではなく、その内側にある「うつほ」、作品と作品の間にある「うつほ」、そして鑑賞する僕たち自身の中にある「うつほ」に、耳を澄ませて頂ければ幸いです。

時のうつほ
「うつわ」を、形から空へ読み替える

本企画の出発点は、「うつわ」の語源を「うつほもの=空のもの」に遡り、器を完成した物体ではなく、空を抱く構造として捉え直すことにある。

ここでいう空は欠如ではない。光、時間、身体、記憶を受け止め、変化と現実を生み出す潜在的な場である。

展示するのは、器ではない。
器の内側に滞留する、見えない空気である。

器の内側は、何もない場所ではない。光、温度、時間、記憶、身体の動作を受け止める、最も豊かな領域である。

本展は、茶碗の歴史から現代彫刻までを「内包された空」の変奏として読み直し、来場者の視線を表面から内部へ反転させる。

展示構成について

本展では、作品をおおむね年代順に配置しながら、うつわの内側に存在する「うつほ」が、時代とともにどのように変化し、拡張してきたのかを辿る。ここで見つめたいのは、うつわの形態そのものの変遷ではない。人はなぜ土を囲い、その内側に「空」をつくってきたのか。そして、その空に何を受け入れ、何を託し、どのようにその境界を変化させてきたのか。展示は「沈黙」「受容」「変容」「解放」という四つの章から構成される。

しかしそこを流れているのは、造形の変化だけではない。師から弟子へ、親から子へ、ある土地から別の土地へと受け渡されてきた継承の時間と、同じ時代を生きた作家たちが互いに異なる答えを示してきた同時代の時間。幾重もの時間が、この小さな「うつほ」の中で交差している。

第一章 沈黙:歴史的な器が抱える、閉じた濃密な空

第一章の「沈黙」では、樂家四代一入、初代大樋長左衛門に始まる。この二つの茶碗のあいだには、単なる様式を超えた、実際の歴史的な繋がりが存在する。初代大樋長左衛門は、京都で樂家四代一入に学び、寛文六年、裏千家四世仙叟宗室と共に金沢へ赴いた。そして樂焼の技法を礎としながら、加賀百万石の風土のなかで新たな茶陶を形づくっていった。本年で開窯360年、大樋焼の始まりである。茶碗は口を開きながらも、その内側には深く静かな空を抱えている。そこには茶の湯の所作や使い手の記憶、幾世代にもわたって積み重ねられてきた時間が凝縮されている。ここでの「うつほ」は、何も存在しない空洞ではなく、むしろ悠久の時間を内包する時空である。

樂一入(四代)「黒茶碗 銘 面白や」

大樋芳土庵(初代)「黒筒茶碗 銘 冬籠」

樂慶入(十一代)「赤茶碗 銘 千代の友」

大樋陶土斎(九代)「白鶴茶碗」

1: 樂一入(四代)「黒茶碗 銘 面白や」

2: 大樋芳土庵(初代)「黒筒茶碗 銘 冬籠」

3: 樂慶入(十一代)「赤茶碗 銘 千代の友」

4: 大樋陶土斎(九代)「白鶴茶碗」

第二章 受容:掌・水・花・身体を受け止める空

第二章の「受容」では、うつわが人間や世界との関係を少しずつ持ちはじめる。掌に収まり、水を湛え、自然を受け入れる。うつわの空は、何かを迎え入れることによって初めてその存在を現にする。器を単なる鑑賞物ではなく、「身体に触れる彫刻」として捉える視点も、この章から浮かび上がってくる。

永樂即全(十六代)「松寿一双 赤絵寿字/乾山写老松」

田原陶兵衛(十二代)「萩 井戸」

高橋道八(八代)「色絵竹ノ図」

黒田泰蔵「白磁花入」c.2006年

樂直入(十五代)「茶碗」

5: 永樂即全(十六代)「松寿一双 赤絵寿字/乾山写老松」

6: 田原陶兵衛(十二代)「萩 井戸」

7: 高橋道八(八代)「色絵竹ノ図」

8: 黒田泰蔵「白磁花入」circa 2006年

9: 樂直入(十五代)「茶碗」

第三章 変容:窯変・亀裂・装飾によって揺らぐ空

第三章の「変容」では、窯変、亀裂、装飾、素材の変化などによって、「うつほ」の輪郭そのものが激しく揺らいでいく。陶芸は、作家の意思だけでは完成しない。土は火を受け入れ、収縮し、釉薬は流れ、時に予期せぬ割れや歪みを生む。そこには、人間が完全には制御することのできない化学反応と自然現象が介在する。うつわは固定された形ではなく、変化の過程の一瞬を凍らせた存在として現れる。

大樋長左衛門(十一代)「想仙叟・大樋窯変 聖茶盌」

シオ・クサカ「(grid 88)」2014年

10: 大樋長左衛門(十一代)「想仙叟・大樋窯変 聖茶盌」

11: シオ・クサカ「(grid 88)」2014年

12: 樂吉左衛門(十六代)「黒樂茶碗 / Black Raku Tea Bowl」2023年

13: 桑田卓郎「茶垸 / Teabowl」2016年

第四章 解放:ガラス・光・開口によって境界が消え、外へ滲む空

そして第四章の「解放」では、「うつほ」はついに器の内側から外へと広がっていく。透明なガラス、光を透過する素材、複数のスリットをもつ造形等によって、内と外を隔てていた境界が曖昧になる。作品の内部にあった空は、周囲の空気や光、鑑賞者の身体、さらには宇宙そのものと連続していく。

シアスター・ゲイツ「Chawan / 茶碗」2026年

安永正臣「Crumbling / 砕」2024年

14: 奈良祐希「Bone Flower」2022年

15: シアスター・ゲイツ「Chawan / 茶碗」2026年

16: 三嶋りつ惠「FRUTTO 2」2014年

17: 安永正臣「Crumbling / 砕」2024年

この四つの章は、陶芸史を単純な進歩の歴史として示すものではない。古い茶碗にも「解放」の萌芽はあり、現代の作品にも「沈黙」は存在する。むしろ年代順に作品を辿ることで見えてくるのは、人間が「空」をどのように捉えてきたのか、その感覚の変化である

「囲う」ことで生まれた空が、何かを「受け入れ」、やがてその輪郭を「変容」させ、ついには外の世界へと「解放」されていく。 本展では、数百年という時間を一つの空間の中に凝縮しながら、うつわの形態の変遷ではなく、その内側に存在する「うつほ」の変遷を辿ってみたい。

時代が移ろい、素材や表現が変わっても、うつわの中心には常に空がある。

その「空」こそが、植島幹九郎という鬼才が社会に絶えず示唆してくれている、過去と現在、茶の湯と現代アートを繋ぐ「ブリッジ」、そのものなのではないかと僕は信じている。

展示予定アーティスト一覧(展示順)

樂一入(四代)、大樋芳土庵(初代)、樂慶入(十一代)、大樋陶土斎(九代)、永樂即全(十六代)、田原陶兵衛(十二代)、高橋道八(八代)、黒田泰蔵、樂直入(十五代)、大樋長左衛門(十一代)、シオ・クサカ、樂吉左衛門(十六代)、桑田卓郎、奈良祐希、シアスター・ゲイツ、三嶋りつ惠、安永正臣

※展示作品は予告なく変更となる場合がございます。あらかじめご了承ください。

植島幹九郎 プロフィール

UESHIMA MUSEUM COLLECTION創設者。1979年千葉県生まれ。1998年渋谷教育学園幕張高等学校卒業、東京大学理科一類入学。東京大学工学部在学中に株式会社ドリームキャリアを起業し、現在では事業家・投資家として多角的にビジネスを展開する傍ら、国内外のオークションハウスやギャラリーを渉猟。国内外一流作家から国内若手作家に至るまで幅広く、現代アート作品のコレクションを続けています。2024年・2025年の2年連続で、US版ARTnews Top 200 collectors(その年に最もアクティブだった世界のスーパー・アートコレクター200人を紹介する特集)に選出されました。

奈良祐希 プロフィール

陶芸家・建築家/本展キュレーター

360年以上続く茶陶の名窯「大樋焼」本家の長男として金沢市に生まれる。東京藝術大学で建築、多治見市陶磁器意匠研究所で陶芸を学び、東京藝術大学大学院美術研究科建築専攻を首席で修了。陶芸の代表作〈Bone Flower〉は、ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館、金沢21世紀美術館などに収蔵されている。2025年大阪・関西万博では、能登半島地震からの復興への祈りを込めたパブリックアート〈祈器〉を制作。陶芸と建築を横断し、国内外で活動している。