何気なく置かれた植物の鉢の前を通りがかると、どこからともなく子どもが喋る声が聞こえてくる。どうも鉢植えの中から聞こえるようだ、と身を屈めると現れるのは一匹のカエル。ネオ・コンセプチュアルを標榜するガンダーの作品は、時折意表をつくような投げかけをして私たちを戸惑わせる。
「あなたは私を恐れているね?」などと、カエルにしたり顔で語りかけられようものなら尚更だ。
表情豊かな身振りで、いとも滑らかに語る本作のカエルはアニマトロニクス(動物の動きを機械的に再現する技術)を使って制御されている。六歳(制作時)のガンダーの実子がカエルの声を当てている。
カエルは人間の意識、認知、感覚についての持論を蕩々と語り、果ては教育論にまで絡めて、人間は答えを覚えるのではなく自ら問いを立てる力を得よ、と諭してくる。愛らしい声にまるで似つかわしくない達観した話の内容に、私たちは終始戸惑うばかりだ。
カエルの話を聞いているうちに、自らを中心とした主観的な世界のあり方に、少し新しい視座が与えられたような気分になってくるかもしれない。
しかし、本作でガンダーがこの小さなカエルに語らせることによって一体何を企図したのか、正解の答えは何一つとして与えられない。カエルが諭すように、この戸惑いに向き合い、自ら問いを立て、答えを考え続ける他はない。